昭和24年 扁額 33×129cm
「出入幽顕」または「幽顕に出入す」と 読む。『古事記』の太安万侶(おおのやすまろ)の序文に見える言葉。「幽顕」は、一般的には生の世界と死の世界、この世とあの世を意味するが、丸山敏雄はその意味を深めて転換して、「顕」には見える現象界の意味を、「幽」には万象を「一」に統合している目には 見えない次元の意味をこめて用いた。
筆ののびが悪いために「幽」「顕」を、 補墨しつつ書いている。滲みの状態や線の重なり具合に、墨液が宿墨化してしまっている様子が表われているが、それもよいとして悠然と書き進んでいる。画数の少ない「出入」二字を骨力豊かな重厚な線で書き、画数の多い「幽顕」は渇筆をまじえたやわらかな線とし、全体を調和させている。隷書風に書き始められているが、隷書の書法にもとらわれず、筆や墨の「いのち」と一つに溶け合い、幽顕に出入して大宇宙に広がる大きな「いのち」の世界に遊んでいる。